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ジェームスは、
よろけるような足取りでクリニックに入ってきた。
後ろから妻らしい女性が黙って夫に寄り添うように歩いてくる。

伏し目がちに、
そして表情の乏しいその女性は、
夫とは距離をとった位置で、
待合室の長椅子に押し黙ったまま座っていた。

時々、ゴボゴボとジェームスの痰を含んだ咳が聞こえる。

HIV/AIDSの診察には夫婦、
又は、カップルでの診察を受けに来る。

互いに病気を見つめ合い、
十分に理解し合っていることを確認した後、
治療を開始する必要がある。

診察が始まった。

ジェームスは56歳、妻は28歳で、二人の子供がいる。
診察の為に、シャツのボタンをはずすと、
首・胸・背中にも大きなものは鶏卵大から、
母指等大の脂肪の塊が皮膚の下にボコボコと見える。

1年前から、右手全体の痛みと共に腕も上がらないらしい。
自分でボタンをとめることも困難の様子。

医師によると、関節の中にも塊が出来て、
神経を圧迫しているとのこと。
診察の間も咳は止まらない。

医師は日和見感染である結核を確信しつつも、
胸部レントゲン撮影検査と痰検査を指示した。

程なくほっそりした体型を示す胸部写真の中に
医師は痰検査の結果を待つまでもなく、
結核を指摘した。

早速、抗結核剤の服用から始めて、
次回にHIVの検査をすることになった。

HIV検査の必要性を医師は説明するが、
夫は十分な理解が出来ない様子で、
同じ質問を何回も繰り返した。
A 『木曜日のチャイドククリニック』
 梶田 和子さん(看護師):2007年1月〜2007年9月 



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