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症状が出てきていることから、
更に詳しくHIVの進行状況を調べる為に、別の検査を受ける事になりました。

その日、待合室にはHIVに感染した患者さんが、100人以上朝から待っていました。
この施設では1日400人、月間8000人以上の人が利用しています。
予め予約してあった時間に到着すると、名前を呼ばれ診察室へ入っていきました。

検査では血液を採取しなければなりません。
小さな女の子にとっては、HIVの検査であろうと、免疫を測る検査であろうと、
注射はどうしてもいやなものです。
採血が終わるまでの間、一度も注射される腕を見ないようにして、
ずっと我慢していました。

この検査は、体の中でウイルスが増殖していくと、反比例するように、
CD4/CD8と呼ばれる免疫をつかさどる白血球が減少するため、
この数値を計ることによって、その人の免疫状態を知ることができます。

ケニアでは、その値が200以上の場合は、
6ヶ月毎の定期健診で様子を見ていきます。

しかしその値が200以下であれば、
ウイルスが増殖してきているため、
免疫力が低下してきている事を示し、
増殖を抑制するARV薬の使用を開始しなければなりません。

しかしARV薬を導入する為には、
原則的に全身状態を良くする必要があります。

そこで何らかの他の疾患を併発している場合はその治療から、
日和見感染症に感染していればその治療から、
結核に感染していれば結核の治療から始めなければなりません。

メリーも、日和見感染症の治療を開始すると同時に、
ARV薬を開始するためのカウンセリングが始まりました。

このカウンセリングでは、
HIV感染者自身やその家族などに
内服に関する正しい知識と自己管理の重要性を
十分に理解してもらうことを目的としています。

なぜかというと、ARV薬の投薬は、
どれだけきちんと薬を摂取できるかにかかっているからです。
毎日きちんと内服できなければ、薬剤耐性ができ、
ウイルスに対して薬が効かなくなってしまう状態になってしまい、
治療を行うことができなくなってしまうのです。

アドヒアランス
(患者がいったん了承した治療法をほとんど監視なしで継続する度合いのこと)
がとても重要なのです。
『メリーに薬が渡るまで』